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晴れのち曇りの北海道
〜前編:トワイライトエクスプレス乗車ルポ〜 その3

さてそうこうしているうちに列車は秋田駅に到着した。時刻は日が変わる直前である。寝てしまうのももったいないが、明日眠いのももったいないので上段寝台へ潜り込み、そろそろ眠る。
途中大久保駅や鯉川駅で運転停車をしていたのを何となく覚えている。
0時を目前に秋田駅で運転停車。向こうに新幹線「こまち」がいた。
寝静まって誰もいなくなったツインの通路。
夜中に目を覚ますと駅に停まっていた。駅名は見えないが、どうやら蟹田駅のようだ。寝ている間に青森駅を過ぎていたようで、牽引機関車も変わり、進行方向も逆になっているはずだ。

下段の連れも起きていた。「今どのへん?」と聞かれたので、「もうちょっとで青函トンネル」と答えた。北海道初体験の連れは青函トンネルを楽しみにしていた。事前に読んだ雑誌ではトンネル内通過中の綺麗な写真が載っていたし、また「サロンデュノール」でJR北海道の車掌が何かイベントをやるようなことが書かれていた、が、どうやら今はやっていないらしい。代わりに解説する。連れは案の定、青函トンネル手前の「フェイクトンネル」に一喜一憂していた。かくいう自分も、この「フェイクトンネル」のおかげで、毎度青函トンネルに入ったかどうかはしばらく経たないと確証が持てない。またトンネルに入った。そしてトンネルから…、出ない。…まだ出ない。ということはコレが本物。3時40分、青函トンネル突入。

下段寝台に替わってもらい、トンネル内ではうつらうつらしていたので、印象としてはあっという間の4時36分、ついに北海道が窓の外に現れた。まだ周囲はよく見えないが、空路では味わえない、距離を辿ってきた本当の「実感」がある。渡道唯一の陸路、鉄道ならではの感動の瞬間である。

◇起床から朝食

ここからの海峡線・江差線も渡島当別付近などで久しぶりに車窓に海が望める区間となる。久々やってきた北海道!…の感動もどこへやら、また知らない間に寝てしまった。目を覚ますと駅に停車中。そろそろ周囲も薄明るくなっている。五稜郭駅だ。

ここ五稜郭駅では牽引機関車を交換と方向転換を行うが、その6分前に上野からの、やはり豪華寝台列車である「カシオペア」が通過し、隣の函館駅へ向かっている。「カシオペア」は函館駅で牽引機関車を交換し、方向転換、五稜郭駅に停車している「トワイライトエクスプレス」を抜いて札幌へ先行する。
その「カシオペア」を一目見ようと通過を待っていると、乗っている「トワイライトエクスプレス」が動き出した。どうやら寝ている間に離合は終わってしまっていたらしい。

この先小沼のほとりを行く車窓のよい区間となる。事前の調べではこの季節の日の出は小沼目前の大沼駅付近らしく、車窓もはっきりしてきた。残念ながらの曇天でやや鬱蒼としているが、ブラキストン線を越えた植生はやはり北海道のもので、渡道を果たした実感も一層強くなる。
この先森駅を過ぎると通路側ではあるが噴火湾沿いの車窓が展開する、が、どうしたことか、また寝入ってしまった。
早朝の五稜郭駅停車中。「カシオペア」は通過済。貨物列車が通過していった。
小沼のほとりを通過中。北海道はどんよりの曇天だった。
「おはようございます。只今時刻は6時30分です。列車は現在定刻で運行しております…」
車内放送が入り、目を覚ましたのは長万部。ここから函館本線から室蘭本線へ入る。北海道に入ってもまだまだ「トワイライトエクスプレス」は堪能できる、とそう思ってはいたが、この長万部という地名から、そろそろ旅も終盤に入ったことを思い、早くも寂しさがよぎってきた。

そろそろ寝台も片付けて座席に戻し、「トワイライトエクスプレス」の車窓を目に焼き付けようと通路に出て北海道の海を眺める。秘境駅小幌をあっという間に通過して礼文華峠を過ぎると再び平野部に出る。
7時26分、北海道最初の停車駅洞爺に到着。先行列車の遅れの煽りを受けて8分の延着。隣とその隣の部屋にいた関西弁のおばさんの一団が大荷物を抱えて降りていった。

8時20分に車内放送に促され、朝食のため「ダイナープレヤデス」へ向かう。車窓を眺めながらの食堂車での食事はいつ以来だろう。多分地元の特急「雷鳥」か「しらさぎ」が最後だったと思う。地元北陸では特急列車の食堂車が比較的遅くまで残っていた方で、まだ恵まれていたが、それでもJR発足より以前の、上野と金沢を結んでいた特急「白山」での営業を最後に全廃となったのだったか。
「雷鳥」「しらさぎ」から食堂車が消えたのは確か昭和60年か61年だったと思うので、少なくともそれより以前となる。約30年ぶりということなる。

あの頃の記憶では食堂車は混雑してとにかく慌ただしかったこと、通路に席待ちの列ができていたことなどの印象が何より強いのだが、今この食堂車は予約制なので、順番待ちの行列を気にすることなく食事を取ることができる。
洋定食のヨーグルトが妙に美味しかった。食事中に道内3つ目の停車駅、登別を出、車窓には樽前山と白老の牧場が広がっていた。
寝台セット状態のツイン。
噴火湾沿いを走行中。少し青空が見えた。
朝の「ダイナープレヤデス」。昨晩と同じ席になった。
洋定食の朝食。注文は乗車時に予約する。
食後のコーヒーor紅茶。
朝食時の車窓には樽前山と白老ファームが見えた。案内放送も入る。
苫小牧到着。ここから最終区間の千歳線へ入る。
室蘭本線・千歳線並走区間を走行中。

◇終着札幌へ、最終区間


部屋へ戻るとすぐに苫小牧に到着した。苫小牧を過ぎると室蘭本線から千歳線に入り、とうとう最終区間に突入。南千歳駅を出ると「次の停車駅は終点札幌」が告げられた。
名残惜しくて車窓を食い入るように目に焼き付ける。それを察してか、元々のダイヤがそうなのか、列車はやけにゆっくりと進む。まだ畑地や原生林も多いが、次第に住宅が増え、高層マンションも目立ってきた。

「大阪から約22時間、距離にして1,500キロあまりのご旅行いかがだったでしょうか。あとおよそ7分ほどで終着札幌、終着札幌到着です。どなた様もお忘れ物のございませんよう、お支度してお待ちください…」

ゆっくりと白石駅を通過しながらハイケンスのセレナーデが流れ、車内放送がはじまった。つづいて苗穂駅を通過する頃「いい日旅立ち」のメロディが流れはじめ、札幌駅へ繋がる高架区間に入った。

「今日はトワイライトエクスプレスにご乗車いただきまして誠に有難うございました。トワイライトエクスプレスの旅をご満喫いただけましたでしょうか。まもなく札幌に、到着いたします。」

「いい日旅立ち」をBGMに女性のアナウンスが入る。そしてメロディが終わると、ずっと楽しみにしていた北海道旅行の、一つ目のメインイベントが終わった。5分延着の9時57分、札幌駅到着。

車内から見た札幌駅は、規模こそ違えど、屋根をかぶって薄暗い雰囲気がデジャブを惹き起こす。なんだか金沢駅に戻ってきたみたいでちょっと興醒めになった。
気を取り直して、とにかく北海道。降り立ったホームの空気は湿気の多い北陸とは違う、キリッとした涼しさがあった。本邦旅客列車最長距離を走り抜け、しばしの休憩に車庫に向かう「トワイライトエクスプレス」に、まずはどうも有難う。
9時57分、終着札幌駅到着。
車庫へ引き上げていくトワイライトエクスプレス。
おわり

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