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晴れのち曇りの北海道
〜前編:トワイライトエクスプレス乗車ルポ〜 その1

「北海道へ行こう」、と、まあ折に触れ考えているくらい北の大地の魅力に取り込まれています。が、今回の渡道はいつもの「駅取材」ではなく、実は連れからの強硬なリクエストでした。そしてそのリクエストは「駅の宿ひらふ」
随分以前に自分がその存在を教えて以来気になっていたらしい。さらに連れは北海道未経験で、自分の旅行話が輪をかけて火をつけてしまった。というわけで、今回はその北海道、比羅夫への訪問を旅行記としてみました。もちろんお約束のようなトラブルも込みで…。

まずは前編、渡道の手段となった「トワイライトエクスプレス」の乗車ルポです。こんなHP管理人としては鉄道知識に極めて疎いことを自認する自分ですが、ここではさらに「鉄分レベル」を落としたつもりですので、ウチの多くのビジター様にはまどろっこしいかもしれませんが、ご容赦のほどを。

◇出発前

自分の地元金沢から北海道へは航空機札幌小松便が王道。しかしこれは一日一往復しかないうえに平成22年からエアドゥ・全日空共同運航となってからは定員が以前の半分程度になり、さらにダイヤが小松朝発夕方着となり北陸側に大幅改善されるに至り、相当なプラチナチケットとなってしまった。
季節にもよるが割引パックなどは三連休などの場合、半年近く前でないと中々押さえられない。

思い立ったのが遅かったこともあり、8月の盆休み、9月中盤の連休は当然不可。往復ともキャンセル待ちすらできない状態であった。ダイヤが良いこともあり、2連休、つまり通常の土日での決行することにし、空席状況に旅程を合わせることにした。それでも小松直通パックは無理で、往路が羽田経由となった。

それにしてもこのチケット確保の困難さを苦々しく思いつつ、思い出したのが3年前、やはり航空チケットが取れず、寝台特急「日本海」+特急「白鳥」の往復で、陸路で渡道したこと。「日本海」は既に臨時列車化されて予定日の運行はないが、金沢には札幌まで直通してくれる寝台特急「トワイライトエクスプレス」がやってくる。

この列車、札幌着が9時52分とほどよい時刻に到着するが、金沢発が15時40分と早すぎ、仕事を少なくとも半日休まないと有効利用できないため、そもそも選択肢に入れたことがなかった。さらにこの「トワイライトエクスプレス」は旅行会社のお姉さんも苦笑いするほどの、空路以上のプラチナチケットらしい。

しかしここは思い切って半日の有休を取ってコレを狙うことにしよう。JR券の場合、旅行会社も確保できる保証はなく、乗車日1か月前の10時に一斉に押さえにかかるしかない。トワイライトエクスプレスの場合、これがあっという間に完売してしまうとのこと。

一応既に空路が押さえられていたため、正直なところ自分は取れなくても全く構わなかった。逆に取れると今度は押さえた空路の往復パックをキャンセルし、復路の航空便を押さえなおさねばならない。まともな料金で。元々負けてやむなしのギャンブルだった。

とは言え、連れからのリクエストと共に、せっかく滅多に取れない休みまで申請したからにはと、一応できる限りの手を打ち、まるで試験の合否が出るような決行1か月前の午前10時。結論としては、希望の2人用B寝台個室「ツイン」が取れた。押さえてくれたのは、実は北海道の鉄道雑学研究所北広島支所支所長氏だった。

元々期待していなかっただけにこの日から連れ以上にテンションが上がりっぱなし。下調べのためインターネットで調べ物をしたり、雑誌や乗車ルポDVDとかも買ったりと、浮わついていた。コレに乗るということを全く考えたこともなかったので、結構初めて知ることも多かった。

そして北広島支所長には感謝感謝。氏には切符の手配はおろか、その前後にも色々アドバイスをいただいた。改めまして、その節は本当に有難うございました。
トワイライトエクスプレスツインと札幌行のキップ。
出発当日、晴天の金沢駅。
◇出発から日没まで

さて当日、金曜午後の金沢駅。晴天である。
元々月曜あたりの週間天気予報では、札幌の週末は曇りから雨だったのだが、今日の天気予報では明日は曇り、明後日日曜日は晴れのち曇りに変わっている。北陸は晴天であるし、車窓から眺める日没はあきらめていたこともあり、それも含めてラッキー。
あとは「トワイライトエクスプレス」らしく、海に沈む夕日が見られるか。これは季節と走行地点による。今の季節では日没は親不知から糸魚川あたりの丁度海沿い区間のようだ。
ちなみに天気予報では日曜晩から週明けに向かって次第に天気は下り坂となるが、これは週明け月曜日晩に四国沖に接近する大きな台風がもたらしているらしい。(←コレ実は重要)

さてプラチナチケットを手に改札を通る。そして「寝台トワイライトエクスプレス15:40 札幌」の列車案内も誇らしげな7番ホームで列車を待つ。
「次の7番ホームの列車は15時40分発、寝台特急トワイライトエクスプレス札幌行きです」
女性の声の電子音による構内放送が流れる。普段なら職場で悶々としている時間帯なのも手伝って、この非現実感に何とはない優越感を覚える。

やがて西金沢方の高架橋の奥に、二条のヘッドライトがゆっくりとこちらへ向かってくるのが見えた。二つの光源の中から次第に濃緑のEF81機関車が姿を現し、それに連なる同色の長編成客車が見えてきた。機関車の前面にピンク色のヘッドマークが視認できるようになる頃、ようやく頭上からは列車接近の構内放送が流れた。

15時37分、札幌行「トワイライトエクスプレス」は定刻で金沢駅のホームに滑り込んだ。

ドアが開く。興奮の瞬間が続く。乗車するのは6号車2号室。A寝台スイートやロイヤルとはもちろん違うB寝台だが、十分に豪華な個室にテンションも上がりっぱなし。二人して落ち着きなく周囲をウロウロする。他の客も何故か個室を出て通路に立って景色を眺めている人が多い。この金沢近辺は、特別に通路側の景色が良いということもないのだが、かつて乗った寝台特急の「日本海」や「北陸」ではあまり見ない光景だ。皆テンションが上がって多動的になっているのだろうか。
トワイライトエクスプレスの表示の出た列車案内板。
金沢駅に進入する、これから乗車するトワイライトエクスプレス。
ドアが開いた。ロゴの入った専用マットが雰囲気を盛り上げる。
6号車2号室、ツイン。可動間仕切りを開放すれば、隣の1号室と4人用個室をつくれる部屋だ。
金沢を出発するとしばらくして車掌が改札と部屋の説明やってきた。車内全体の設備から部屋のカードキーの使い方、室内の寝台の作り方、上段寝台の梯子のかけ方、空調の操作など、事細かに説明してくれる。つづいて食堂車から朝食の注文、グッズの販売にくる。ちなみに下り列車では食堂車は16時まで「ランチタイム」の営業があるが、終了直前となる金沢からの乗車では利用できないらしい。

列車は倶利伽羅峠を越えて富山県に入る。部屋に鍵をかけて車内散策に出ると4号車のロビーカー「サロンデュノール」は「満席」だった。客層は年齢層がかなり高く、引退後の余暇を楽しむ人たちなのだろう。そして基本的に関西弁が飛び交っている。平日に、正午前大阪を発ち、のんびりと陸路で北海道を目指す一団だから、この年齢層も当然かもしれない。

政界みたいな話だが、四十路目前の自分がここでは若造だ。そして若輩者は、夕食の一人12,000円フルコースディナーはちょっと手が出せず、3号車の食堂車「ダイナープレヤデス」は、21時から飲み物と軽食が提供される「パブタイム」で体験しようと決めていた。「パブタイム」は席の予約ができないので全車両から我々のような客が殺到することが予想されたので、「運が良ければ」くらいに考えていたが、この年齢層なら結構夜は早いかもしれないと、今は着席できないサロンを眺めて密かにほくそ笑んでいた。

魚津駅の手前、片貝川橋梁付近から海が見え始めた。北陸本線はこの先、新潟県境も迫る泊駅を過ぎると平野が尽きる。そして迫る親不知の山並みに押し出されるように海沿いに出、県境を越えた青海駅まで、親不知駅前後の長大トンネル区間を挟んで海岸線を走る。糸魚川で一旦街中に入ったあと、その後浦本駅からの再び長大トンネル区間にかかるまでは民家越しに海を望め、さらにトンネル区間を過ぎた有間川駅から再び路線終点の直江津駅手前まで海沿いを走る。

またさらに先の信越本線では、柿崎駅から鯨波駅にかけて米山福浦八景と呼ばれる海岸線を走るが、この区間には海に最も近い駅(異論は認めます)として有名な青海川駅も含まれている。
「トワイライトエクスプレス」のコンセプトは元来、この福浦八景で、下りは日没、上りは日の出を迎えることらしいが、それは夏場の話。今の季節では、今走行している北陸本線の泊駅辺りから光線の具合が「トワイライト」になってきた。

「トワイライトエクスプレス」の客室は本州区間の海側に並ぶ。「ツイン」は枕木に並行の向きに一対の一人掛けソファが向かい合うため、窓側の席は窓に背を向ける。限られた空間だから仕方ないとは言え、なんだかなあと思っていたが、実は窓側のソファは片側だけ肘掛がなく、体を90度横に向けて車窓を眺められるように配慮されている。
さらに上段寝台用の窓も大きく、そのため細長い室内も非常に開放的に広く感じられるのだが、上段寝台に腰掛ければ、新幹線2階席のような、見下ろすような車窓が得られる。こうして海沿いの「トワイライトタイム」の車窓を堪能し、夕日はこの日、丁度この辺りでは海が望めるギリギリの、浦本駅通過時、日本海に沈んで消えていった。
満席だった「サロンデュノール」。砺波平野を走行中。
北陸線、親不知区間手前の海沿いの車窓。富山新潟県境の境川橋梁を渡河中。
部屋にあったゴミ箱。揺れに耐えるようどっしりしていたが、ベコベコだったのが妙にいとおしかった。
浦本駅通過中。民家越しの日本海の水平線に消えてゆく夕日。
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