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晴れのち曇りの北海道
〜後編:駅の宿ひらふ宿泊ルポ〜 その2

◇神威岬

満足して続いては積丹半島の突端、神威岬へ。
昼食前にこの東にある突端、積丹岬・島武意海岸にも寄ったが、神威岬には積丹岬の倍以上もある大きな駐車場があり、大型バスも散見された。そして積丹岬より景観のスケールも一回り二回り大きな場所だった。さらにここで渡道以来一番の青空となった。

目の前には北海道らしい雑木の一本もない熊笹の繁る丘陵があり、そこに遊歩道が伸びる。これを辿って岬の尾根づたいに突端まで歩くと、積丹半島のどの観光ガイドを見ても乗っている奇岩、神威岩が見下ろせる。

青空はわりとすぐに薄雲の曇天に変わったが、それでもこの距離で見下ろしても分かる透明度の高い海で、まさに「シャコタン・ブルー」。また海に突き出る地形としては、今日はあまり風もなく、少し歩くと汗ばむくらいの陽気。連れも「一番良い季節なんじゃない?」とご満悦の様子だった、が、遊歩道は岬の途中で通行止めになっていた。この先土砂崩れで通れなくなっているらしい。神威岬の象徴神威岩を間近で見ることは叶わなかった。また小さなスカ。

「また」、というのは、実は小樽などで、道中このような当て外れ、「小さなスカ」がいくつか重なっていた。神威岬の雄大な風景に心洗われるも、トワイライトエクスプレスのチケット入手以降ラッキーが続いていたこの旅も、ここの青空を最後に、僅かばかりの綻びを見せ始めていた。天気もここ以降はどんよりとした曇り空となった。
神威岬の遊歩道が縦横に走る丘陵。壁紙にしたいくらいの天候にも恵まれた。
神威岬の入口から岬の方向を望む。尾根伝いに遊歩道があり、突端までいくと奇岩神威岩を見下ろせる。
が、岬の遊歩道は中ほどで通行止め。神威岩は、その特徴的な形状から、丘の上から何とか遠望できたが。
岬の突端へ行けずとも、このあたりの景観はとにかく雄大。木が繁らないからか、巨大な岩壁や岩山が望めた。

◇神恵内村リフレッシュプラザ温泉998


さて続いては積丹半島をぐるりと回って南岸沿いの神恵内(かもえない)村へ。
ここに変わった温泉があるらしい。国内で最もしょっぱいと銘打った温泉で、名前は「神恵内村リフレッシュプラザ温泉998」という。名前も変わっているが、これは道道998号沿いにあるかららしく、平成4年に村の事業として掘削されて湧いた温泉で、当時はそのまま神恵内温泉を名乗っていた。

現在日帰り立ち寄りのみの施設で、見た目はちょっと大きな銭湯、または老人デイサービス施設のようで、外観はわざわざ遠方から狙って立ち寄りたい施設には到底見えない。だが事実、ネットを見ると我々に限らず内地からの客も多く、中にはコアなファンもいるようだ。

今回の旅、連れからの「比羅夫でバーベキュー」発言を発端に実現したのだが、この人、別にいわゆる「鉄子」ではない。しかし自分の駅巡りの話や旅行に観光列車などを絡めるなどしていたら、次第に影響を受けたらしく、一緒にいる時たまに電車や鄙びた駅施設にカメラを向けるようになったし、ごく稀に自分のいないところでもそんなことをしているらしい。たまに画像メールを送ってくる。ちなみに今回のトワイライトエクスプレスも当初は連れの方が乗り気だった。
一方自分はというと、元々どちらかと言えば風呂は面倒な作業と思っていたフシがあり、カラスの行水であったが、温泉好きの彼女の影響で、わりと好んで温泉などに立ち寄るようになった。結果、全国の結構な数の温泉に入ってきた。

そんな訳で、大体連れとの旅行は「温泉8」に「”鉄分”その他2」くらいのものが多く、これはお互い満足している。(”鉄分”が低いのは、駅巡り含め自分が「”鉄分”10」の旅に一人で出るからである。)温泉998は、そんな訳で自然に行程に入れられていた。

多くの温泉を経験はしたが、自分の温泉知識など、誰にでも分かるような、温度、色、ニオイ、味、肌触り(ぬめり(?))の違い程度のものだ。成分や分類などは全く知識にない。ただ最近お湯の「当たり」が強いか柔らかいかが何となく分かるようになってきた。

単純に温度の問題もあるのだろうが、実際入ったところで思いつくのは、柔らかい温泉は、例えば岩手の鉛温泉、長野の戸倉上山田温泉とか角間温泉、岐阜の割石温泉、石川の白峰温泉なんかもそうかなと思う。一方強いと感じたのは長野の渋温泉や野沢温泉、栃木の那須温泉、大分の塚原鉱泉とかだろうか。

そしてこの神恵内の温泉998は、明らかに後者、当たりの強い温泉だった。よく似た泉質の温泉も経験がある。(と言っても「かなりしょっぱくて茶色い」というだけだが、多分似たものだろう。塩化物(強塩)泉というらしい。)富山の神代温泉や新湊温泉、また有名な青森のみちのく温泉や黄金崎不老ふ死温泉なども似ていると思う。(いずれも適当に言っています、詳しい人ごめんなさい。)

が、ここはかなり塩気の強かった神代温泉や新湊温泉よりも、温泉の成分総計とやらがかなり高いらしい。確かにお湯が相当しょっぱいし、湯船のヘリに塩のようなものが浮いている。
少し湯温の低い露天風呂はのんびりできた。じわーっと温まってくるのが分かる。湯上りもほっこほこである。
神恵内村リフレッシュプラザ温泉998。漁師さんと思しき人たちで盛況だった。
道中見かけた岩内線幌似駅の駅跡。プチ取材。

◇比羅夫へ


しょっぱい温泉を出て時刻も16時を過ぎた。次の目的地はいよいよ宿泊地比羅夫駅だ。
少し走って泊村に入るとやがて目の前に雲をかぶったニセコアンヌプリが見えてきた。比羅夫駅はあの裏側にある。

ここでふとみぞおちの辺りに変な刺激を感じた。自分の体ながら「あれ?腹減ったのか?」と最初は思ったが、さっきウニ丼を腹いっぱい食べたばかり。不思議に思いつつ、丁度コンビニがあったので休憩する。連れは普通に買い出しに行ったが、自分は駐車場の縁石に座り込んでしまった。
若干吐き気がする、が、吐くほどではない。脂汗が出てきた。「ヤバイ、普通じゃない、何だ?」最初ウニ丼に当たったかとも思ったが、そもそも食あたりなどあまりしない体質だし、タイミングもおかしいように思う。至近の原因、ということで思い当たるのは、「まさか湯当たり?」
先ほど長々とありもしない温泉知識を挟んだのは、似た温泉もなんということもなく「クリア」していることをアピールしたかった、というだけの意図で、そもそも湯当たりもしない体質なのだ。一言でいえば鈍感体質なのだが。

北海道まできて不覚も不覚、滅多にない体調不良でグロッキーになってしまった。温泉998の営業妨害をする気などないし、年甲斐もなくトワイライトではしゃぎ過ぎ、寝不足で弱っていたのかもしれない。そもそも湯当たりかどうかも定かではない。連れに胃薬を仕入れてもらい、運転も変わってもらう。

天気も悪く、暗くなりつつもあったので、この先のニセコパノラマラインはあきらめて、普通に国道5号線へ向かってもらう。つうか今パノラマラインなんか走られると、吐くかもしれない。

5号線沿いの倶知安の市街地を過ぎ、カーナビに誘導されるままに国道を右に外れると、山中へ分け入るような道となった。しばらく無人地帯を進み、右手にわずかに民家が現れると、道は急坂を下りながら左に折れて、広場に突き当たった。17時過ぎ、ついに比羅夫駅到着。闇ではないが、かなり薄暗くなっていた。
国道を逸れて比羅夫駅へ向かう山道。この時は助手席で、ぐでーん。
比羅夫駅到着。あたりは急速に闇に包まれていった。
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