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本州で最も遠い地へ その1

千葉県。北陸で生まれ育った自分にとっては、実は本州で最も遠くに感じる県です。なぜか。言うまでもなく東京の存在です。田舎者にとって「東京」は住む世界が違う、ということが勿論ありますが、大学時代、行動範囲が劇的に広がる時期に鉄道への興味は失っていた自分にとって、長距離移動はまず自家用車というのが、まず刷り込み的にあります。
となると大都市圏は大の鬼門。ここを超えないと到達できない県は、心理的に青森県や山口県よりもはるか遠くに感じるわけです。そして実際、(常磐線で柏を通過したことを除くと)本州で最後に足を踏み入れた県でした。

平成26年1月。この頃になると駅巡りも四国、九州、北海道にもそれなりに足跡を残し、むしろ手付かずの広大な「フロンティア」は苦手な関東・関西の大都市圏となっていました。というわけで、今回は関東圏、「ビヨンド・トーキョー」の南房総をメインとした駅巡りの記録です。
夕焼けが夜の青に変わりつつある館山駅

◇9連休!

ウチの職場は基本的に土日休み、そして年末年始休みは12/30〜1/3の5日間。勤めて15年以上経つが、平成26年の年末年始は初めてその5日間が月〜金曜にすっぽり収まった。つまり初めての9連休である。
しかし駅巡りがライフワークとは言っても、さすがに正月にぶっ通しで駅巡りするのもどうかと思う、が、やっぱりせっかくなので多少は休み中駅巡りを入れたい。とにかくこのせっかくの大連休を一日たりとも無駄にしたくない。というわけで予定を決めておく。

12/28〜29は職場のデスク周りの片づけ、12/30〜31は実家のこれまで放置されていた空き部屋や中庭の大掃除、年越し・元日は家族と過ごし、1/2〜4は駅取材旅行、1/5は仕事に備えて休息日とする。

そして1/2〜4の3日間の駅取材は、「帰省ラッシュによる不慮のトラブル回避のため、(自家用車を避けて)公共交通機関のアクセスがよく、かつ物理的移動距離が長すぎないところ」「3日を費やすほど未取材駅が多く、かつ苦手な大都市圏ではないこと」という条件に、ついでに北陸からは帰省ラッシュの人の流動が逆方向となることも決め手として、行き先は千葉県房総半島と決めた。

さて年末に向け駅取材の計画も立て、こうして意気込んだ年末年始休日、年内は職場と実家の大掃除を計画通り完了。実家などは場所によっては数年ぶりの掃除で見違えるようになった。

が、ひとつ予想外のトラブルが起こった。マスクを「二重履き」していたにもかかわらず相当のハウスダストを吸い込んだようで、咳が止まらなくなった。特に実家の中にいるとダメで、中々収まらず、咳のしすぎで頭と腹筋が恐ろしく痛い。
こんなコンディションではあるが、年明け、予定通り駅巡りは敢行する。

出発は1/1金沢駅東口22:20分発、JR関東バス(夜行)池袋行き。元日晩の夜行バスに乗る人が意外に多いんだな、と思った記憶はあるが、特段車内の記憶はないので、普通にそれなりに寝て、それなりに眠れなかったのであろう。
到着は翌朝5:52。夜行バスは早着することが結構多いのだが、今回はほぼ定時だった。

早朝の池袋から秋葉原、錦糸町、千葉で乗り換え、最初の取材駅内房線の五井駅へ向かう。
元日晩の、金沢駅東口長距離バス・路線バス乗り場。意外に人がいた。
まだ夜の暗さの、早朝の池袋駅東口に到着。
◇1日目(五井→館山)

初日の計画は以下。緑字は下り方面で到達、オレンジ字は上り列車で到達の駅で、カッコ内の数字はその駅の滞在時間。
【1日目の行程(当初)】
池袋6:04→7:45五井(41)8:26→8:35姉ヶ崎(12)8:47→8:52長浦(22)9:14→9:18袖ヶ浦(12)9:30→9:34巌根(15)9:49→9:53木更津(27)10:20→10:27君津(30)10:57→11:08大貫(51)11:59→12:04青堀(2)12:06→12:20上総湊(42)12:49→13:01青堀(2)13:01→13:20竹岡(13)13:33→13:44佐貫町(29)14:13→14:31浜金谷(42)15:13→15:21安房勝山(15)15:36→15:40保田(11)15:51→16:10富浦(19)16:29→16:33岩井(22)16:55→17:03館山(12)17:15→17:19那古船形(34)17:53→17:57館山泊
 
各駅の滞在時間は駅の規模や構造によるが、10分あれば大体何とかなる。が、基本的に15分くらいは取りたいし、橋上駅舎については実はもうちょっと欲しい。

駅取材に限らず、駅利用時は、1面1線の駅と駅舎側ホームのみを利用する以外の場合、動線上で線路を越える。線路を越える手段は平面か、下をくぐるか、上を越えるかのいずれかで、つまり構内踏切か、地下道か、跨線橋かということになる。
移動が楽なのはもちろん構内踏切であるが、安全面から跨線橋または地下道という手段をとる駅が主であり、つまり取材動線上に階段が出てくる。駅舎のうち、駅舎自体が跨線橋であるのが橋上駅舎だ。

橋上駅舎は構造の主旨からほぼ確実に正面と裏手の二面の駅舎があり、構造上まずホームから改札に上がる必要がある。
つまり「駅取材」、駅の撮影には「ホーム(階段↑)改札(階段↓)駅舎A外観(階段↑)自由通路(階段↓)駅舎B外観(階段↑)改札(階段↓)ホーム」と階段の上下が最低3回ずつある。

ジャンクション駅などホーム面数が増えるとその数だけ階段の上下が増えるし、駅ビルのある駅など、駅のサイズが大きくなるとコンコース・自由通路の動線が延びるうえに、3つ目以降の入口(駅舎)が出ると更にその数だけ動線が延び、かつ階段の上下が増える。

また橋上駅舎は都市近郊に集中して多く、連なることが多い。繰り返されると体力は奪われ、同じ規模の駅でも次第に必要時間は延びていく。
そして都市近郊の駅の場合列車本数も多いので、過不足ない滞在時間だと休憩なんてこともできない。

マナーと危険と迷惑と合わせ、体力温存の意味からも、基本的には駅では走らない。やっても早足。つまり階段のある競歩をしている状態になる。休憩は車内で1〜3駅区間、というのが基本動作で、これを一日繰り返す。

「駅巡り」なんて長閑な響きだけど、駅の撮影それのみに特化し、日没までに極力多くの駅を回るというのが命題とすると、実は中々のスポーツでしょう笑(駅間を歩く場合もあることを含め、本所「鉄道雑学研究所-苦行.net-」の「苦行」の由来である。)

ただ「橋上駅舎が連なる=都市近郊=列車本数が多い」という場合が過酷であって、地平駅舎が並び列車本数が減る路線においては、動線も短く「取材」実働時間が減るうえに、逆に待ち時間が多くなる。周辺環境も長閑になるので結構まったりする。ただし一方で消化駅数が減り、今度は日没を睨みながらヤキモキする時間が増える。こちらは精神的な消耗戦になったりもする。

また列車本数が減ると上下列車を組み合わせた移動となる関係で、滞在時間が極端に短くならざるを得ない駅が出て近郊区間より慌ただしい駅も出たり、更に上下列車同発の駅も出てくる。単線の列車交換であれば、到着の方の時刻に差があればその時間をまだ利用もできる場合もあるが、基本的に同発となった場合はただでさえ希少な列車を1本逃すことになる。

本日の行程は、その前者後者の典型例で、君津までの複線区間は順方向のみへ進む、橋上駅舎の多い苦行区間、君津より先、列車本数が減る単線区間は上下列車を組み合わせて、3駅進んで1駅戻るを繰り返しながら進む、ローカルムードの増すまったり区間となる。ただ館山までの内房線はローカル区間とはいっても本数は多い方で、駅滞在時間はそれなりにほどよい時間に収まっている。

が、事前に立てたこの計画、実はいきなり崩れた。
要因は池袋のスタートが思いのほかスムーズで、錦糸町からの総武快速に、予定の一本前の列車に乗れたことと、五井駅に他社線ホーム(小湊鐵道)があるため、多めの滞在時間を設定していたが、そこまでの時間を要しなかった、という理由から。
つまりは前倒しの崩れ方なので、悪い意味ではない。ただ計画全体が組み直しとなった。

組み直した結果、下り列車一方向から、上下列車を組み合わせて交互に移動する移動方法に変わるのが、大貫駅から青堀駅に(君津駅を一旦とばす)なったこと、その結果降車する駅順がかなり変わったこと、君津から佐貫町への移動に特急が入ることになったことが変更事項として盛り込まれた。

それよりも一駅問題が出た駅があった。保田駅である。この駅は滞在時間が、特急との列車交換待ちの2分しか取れないことになった。(まあ当初計画でも青堀駅が怪しいですが。)


というわけで、五井で立て直した新計画を元に駅取材開始。
君津までの複線区間はそれほど駅数は多くはなく、体力があるウチに回れたのですんなり終わった。降車順を変更した青堀から君津に戻り、ここから当初予定になかった特急「さざなみ」に乗る。降りるのは3駅先の佐貫町。そしてこの辺りからローカル色が強くなって個人的にホッとする。
池袋から、秋葉原で総武線に乗り換え。次第に空が白んできた。
最初の「取材」駅、五井駅。小湊鐵道の駅があったため滞在予定時間を長めに取っていた。
複線区間の主要駅、木更津。好ましい国鉄テイストの駅舎と証誠寺の狸囃子のオブジェ。
複線区間の終端、君津駅。ここから3駅だけ特急「さざなみ」に乗車する。
君津から乗った特急から下車したのはマザー牧場下車駅、佐貫町。車窓は一気にローカルに。
海が見え始めた竹岡駅。房総らしい景色になってきた。
   
◇ホームの撮影について(誤算の保田駅)

更に進んで12時半過ぎに上総湊駅到着。この駅の滞在は30分強。まだ昼食は取っていないが、店に入って何か食べるには心もとない時間だ。駅舎前に並ぶ自販機におつまみの自販機があったので、何となく「ビッグカツ」を買ってみた。もしかしたら中学校以来かもしれない。今でも上総湊駅の画像を見るとあの懐かしい味が思い起こされる。

さて、そんなことよりもこの駅滞在中にやっておかなければいけないことがある。そうこうしているウチに、あの保田駅が次の下車駅に迫っている。保田駅の情報収集だ。
保田駅では乗ってきた列車が対向特急の通過待ちをする2分の間に「取材」を済ませ、同じ列車に乗り直して次の駅に向かうという予定となっている。効率よく回る必要がある。

保田駅についてスマホで情報を集める。とにかく滞在時間が取れないので、ホームやホーム上の施設・備品などを歩を戻すことなく撮影するために、なるべくホーム端に降りて、跨線橋に向かいながら撮影、そのまま駅舎外に出て駅舎を撮影し、即再入場して列車に戻る。与えられた2分間はなるべく立ち止まらずに、なるべく長いストロークを最短距離で移動しながら撮影をしたい。
そのために欲しい情報はホーム形態と跨線橋の向きだ。
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