▲鉄道雑学研究所北陸支所トップへ  ▲旅の記憶、旅の記録INDEXへ
東北へ行くのだの巻  その2

○大正モダン駅舎の昭和的な平成の記憶 〜白河駅にて〜

黒磯を過ぎると交流電化区間に入り、地形も山がちに。程なく県境の峠を越えると福島県。ついに東北の地である。

東北最初の街と言えば白河の関で知られる白河市。代表駅白河駅は、駅巡りを始める前に一度訪れたことがあり、旧国道から1本入った通り沿いに、雰囲気のある駅舎と土手上にあったホームが印象に残っている。

午前10時過ぎ、白河駅着。土手上のホームに着くと駅舎の屋根と僅かに駅前が見える。
ホームの待合室も凝ったつくりをしているし、駅舎への通路もお大尽の通り道のような威厳を感じる。天井の高いコンコースはステンドグラスの外窓が映え、ちょっと空虚な待合室は古きよき鉄道の時代を体現しているような空気感がある。改札を通り駅舎を出て振り返ると、確かにこの印象にある堂々の木造駅舎だ。

ただ駅前は新たに整備されたらしい。バスのロータリーとタクシー乗り場、自家用車の動線が分離され、駅舎前も歩行者専用にインターロッキングブロック敷きの広場となっている。

そんなに明確な記憶が残っているわけではないが、駅前通と駅前広場、そして駅舎前の全ての境界が曖昧で、どこかこの大正チックな駅舎が昭和の生活感にまみれたような印象、またこれだけ立派な駅舎なのに旅客駅より貨物駅的な野暮ったさ、少なくとも貨物と旅客が同等の比重で駅の主役を張っているような、なんというかリアルな鉄道風景を形成していた駅、という印象を持っていたし、そこに大変好感を持っていた。

もちろん機能が明確化することで安全性が増し、さらに見栄えもよくなった駅前にケチをつける気はさらさらない。特殊な意見だというのも自覚している。
ただどこか余所行きな、すましたような佇まいとなった駅舎からは、初見の頃の、まったりしつつもどこかギラギラした生気が損なわれたような、そんな気がした。
大正モダンな駅舎で東北の駅百選に認定されている白河駅。駅前がキレイになっていました。
外観ではあまり目立ちませんが、駅舎内からは高い天井によく映えるステンドグラス。
コンコースとは分離された待合室は食堂の跡だとか。
駅舎からホームへの通路。上屋と木柵が何とはない「偉そうな」気分にさせます。
○やるじゃん公共工事 〜二本松駅にて〜

実は郡山付近と福島付近は若干取材済みとは言え、この両駅、ほとんど隣接しているような錯覚を持っていた。

一度地元で同好の関東の方に出会ったが、「直江津から、ちょっと富山に寄ろっかな〜、と思ったら遠いんだよね〜。びっくりした。」とか言われていたが、彼にとっては上越市(直江津)と富山市、さらに金沢市は目と鼻の先の感覚だったろう。もちろん間にある糸魚川、黒部、魚津、滑川や高岡、小矢部(石動)などといった各市やその他の町村を、鉄ちゃんであれば知っていないわけではないだろう。

それでも在住遠隔地の同一沿線・街道沿いの、主要都市同士の二点間は感覚的距離が極端に短くなりがちで、現地で次々と現れる、記憶から弾かれていた地名に驚き、納得し、たまにうんざりし、結果としてその二点間は感覚的には必要以上に間延びする。

申し訳ないが自分にとって二本松駅はそんな駅だった。郡山を過ぎてから、意外に福島が遠い。二本松着、時刻は13時少し前。

二本松駅は工事中だった。駅自体ではなく、駅前を流れる六角川の治水工事らしい。駅舎を出る前から駅舎に密着するような工事用仮囲いが外の視界を占有する。仮囲いは新幹線「はやて」色に塗られているが、そんな言い訳的な茶目っ気などどうでもいい、とにかくこれでは駅舎の撮影ができない。

駅舎正面に回り込むがやはり駅舎は隠れてしまう。無理やり駅舎と仮囲いの隙間からなるべく全体の入る構図を模索する。
駅舎は二本松城(霞ヶ城)をモチーフとしたような石垣の壁もあるし、駅舎前にも石垣のオブジェがある。新しくはないが意匠を凝らした駅舎なのに、少ないケースではないが、嫌なタイミングに来てしまった。

駅舎内に戻る前にもう一度、恨めしそうに仮囲いに一瞥やる。その瞬間、脱力し、なんだか全てがどうでもよくなった。というより、一気に和んでしまった。それが何かは下の画像をご覧ください。

それだけ。ご当地の方重ね重ねごめんなさい。
駅舎の目の前を流れる六角川の治水工事中だった二本木駅。
駅舎前の石垣のオブジェ。なるべく避けたつもりでも背景の工事中の物々しさは避けきれませんで。
駅舎に面する工事用仮囲いにあった現場見学窓。なんですかこの茶目っ気は。
○福島駅へ 〜南福島駅にて〜

旧松川町にある松川駅から福島市内の駅。とは言え隣の金谷川駅を挟んで前後に上下線が大きく乖離する峠区間がある。東北本線上で平成の合併以前からの旧来からの福島市は南福島駅からとなる。

南福島駅は福島市市街部のある盆地の、南端にある。周辺は住宅地で高校が近いほか、郊外型店舗や工場も少なくない。郊外型住宅地街かと言われると、むしろ下町のような風情である。
市内駅ではあるが駅自体は大きくはなく、学生がその主な利用者であろう実態は、狭い駅前を埋め尽くしている自転車の数から想像がつく。

南福島着は13時24分。そう大きくもない駅なので13時半前には「取材」終了。下り列車でのアクセスだったが隣の県都駅福島駅で折り返す列車が多い関係から、行きつ戻りつの駅巡り行程ができず、次の列車は順方向に14時21分発下り福島行き。そして福島駅で乗り換えて北を目指す。が、福島駅以北は県境を越えた白石駅まで本数が減る。さらに待ち時間ができて福島発は15時ジャストとなる。

ちなみに、と調べると、その前の福島発下り列車は14時2分。これを捕まえられれば1時間もの前倒しになる。次列車を待っていてはもちろん無理だが、市中の隣駅である。徒歩でいけないか?が、調べてみると南福島駅から福島駅までの営業キロは3.4キロ。約30分で3.4キロ。ビミョー…。

いずれにせよこの小駅で1時間弱を過ごすよりも、取りあえず福島駅に移動することにした。もちろん徒歩である。14時過ぎの列車を捕らえられれば1時間前進、ダメでも予定どおり、福島駅で時間を潰せばよい。福島駅ならば駅ビルもあるしいかようにも時間は潰せる。

幸い南福島駅構内では既に東北新幹線の高架が路線に並行しており、福島駅の方向を示し続けてくれる。そして幸い歩く分には路線にほぼ並行した道路がついており、この付近阿武隈川の分水が縦横に走っているものの、橋のための迂回もそれほどなく、ほぼ真っ直ぐ歩くことができた。さらに南福島駅は既に峠を下りきった盆地内にあるため、さしたるアップダウンもない。
そしてその結果、





…滑り込みアウト。サイアク…。


福島駅着、14時2分。クソ暑いので走りたくなかったのもあるが、ビミョーな時間と距離に、道中あきらめたり思い直したり、で、その結果が最悪なものに。仕方がないのでエキチカで遅めの昼ご飯。ヤケクソで昼から生ビールである。
郊外型下町の駅、南福島駅。駅前には自転車がズラリ。
福島駅着。列車発と同着の、トホホな滑り込みアウト。今でも思い出すだけで暑苦しくなったり。
福島駅を15時に出る。大体この季節は19時前まで「取材」は可能。天気は良いし、地元より東にきてはいるが緯度も高いので日照の点では妥当なところであろう。ところが移動の点でのファクターが想定より下回った。列車が少ないのである。

今日は時間的に白石駅+αまで、を目論んでいたが、結局県境手前の各駅の滞在時間がそれぞれ多くなり、県境を越えた越河駅に達したのが17時直前、そこから一駅戻って福島県内、宮城県境間近い貝田駅が18時直前着。次列車の関係から、結局ここでこの日の打ち止めとなった。
夕暮れとなった越河駅。日も傾き斜光線が長い影を伸ばす。
そして影も出なくなった貝田駅。越河と共に日没の貴重な時間帯に小一時間ずつ削られ、この日は終了。
その / 2 /  へ
▲鉄道雑学研究所北陸支所トップへ  ▲旅の記憶、旅の記録INDEXへ