▲鉄道雑学研究所北陸支所トップへ  ▲旅の記憶、旅の記録INDEXへ
中央・大糸反復横跳びの旅 その1

駅の画像を集める場合、大きく言えば「日没との勝負」となるわけで、となると如何に効率よく多くの駅を回れるかが鍵となります。大よそ駅滞在時間は駅規模にもよりますが、よほど大きな駅でもない限り15〜20分が理想。列車がひっきりなしにやってくる都市圏ならば特に問題ないものの、地方では中々その間隔で次列車が来る路線はありません。

列車運行が30分ヘッド以下の、順方向に一駅ずつ降りるには本数が少ない路線ではどうするかと言うと、「反復横跳び」よろしく3駅進んで1駅戻るを繰り返すことになるわけです。実はこれは本所所長直伝の方法なのですが、これならば同方向の次列車で2つ隣の駅へ進むことになり、効率が格段に上がります。
さらにそれでも時間が空きすぎる場合や駅間距離が短い場合は、隣駅まで歩く。これを使うと「行って帰る」2列車分が前倒しとなり、さらに効率は上がります。そして使用する切符は当然、青春18切符。

こうした駅訪問(駅取材)を、平成16年3月末、サイト開設以前のことになりますが、中央東線・大糸線で行ったものを例に紹介したいと思います。「何やってんだか」は言いっこなし、ということで(笑)。

出発は金沢〜八王子間の夜行バスで。今回の駅取材の旅程は2日かけて八王子から中央東線を北上し、篠ノ井線、大糸線経由で北陸線に出、金沢へ戻る。その間の未取材駅(特に中央東線の殆ど)を拾うというもの。

中央東線沿線、特に山梨県内は実は同じ中部圏とは言え、北陸からは結構アクセスしづらい地区なのだが、この夜行バスならば直接沿線上に降り立てるわけだ。
この夜行バス、実はどのルートを辿るのか知らない。おそらく中央道を上るのであろうが、長野・松本を経由するのであろうか。とにかく22時10分に金沢を出ると翌朝6時30分頃には八王子に到着する。
目が覚めると閉められたカーテンから薄明かりが漏れている。時計を見ると6時を少し回ったところ。中々いい時間に目が覚めた、とカーテンを少しめくって外を覗いて見ると、
「?、…白い…?」
寝ぼけた頭でよく状況が飲み込めないが、まだ長野山梨の山中なのだろうか、濃霧である。
が、しばらく見ていると霧の合間に見えるのが木々から民家に変わってきた。よく見ると、見たことのある道、確かに八王子の街のようである。

八王子という街、数度訪れているが、その都度雨が降っている。唯一天候が良かったのは初めて訪れた時。この時は、実は高校時代の初上京時で、横浜から東京へ向かうのに、列車を間違えて「来てしまった」時である。八王子の何が悪いと言うわけではもちろんないが、強いて言えば「相性が悪い」。

結局霧は晴れないまま、京王八王子駅に到着した。
霧中のJR八王子駅。
霧の中入線する列車。西八王子駅にて。
さて京王八王子駅に着いたはいいが、向かうべきはJR八王子駅。その方向がさっぱり分からない。とりあえず勘で市役所方面の案内がある方向へ歩くと、意外にすんなり見つかった。こういうところはわりに運がいい方だ。
霧の中にそごう併設の大きな駅ビルが聳えている。八王子の街も、駅も、まだ早朝であるため往来は少なく、霧の中という雰囲気も相まって、なんだか変な感じである。
さてここから下り方向へ向かう。仮にここが閑散路線であったならば、セオリーでは八王子から2駅進んで高尾、1駅戻って西八王子、3駅進んで藤野、1駅戻って相模湖、3駅進んで四方津といった具合に、上下列車を組み合わせて行きつ戻りつの「反復横横跳び」をしながら降りるところであるが、もちろんこの辺りはそんなことをする必要もなく、下り方面へ一駅ずつ降りていく。

実は毎度毎度のことながら、計画は立てていない。山梨県内に入り、ラッシュアワーが過ぎる頃、つまり順方向一辺倒から、「反復横跳び」を開始する駅を調べてあるだけ、今回の場合それは上野原駅である。
中央東線という路線は個人的には比較的馴染みの深い路線で、北陸から行きづらい地区とは言えよく乗っている方だ。そして毎度高尾からの車窓の激変を何となく楽しみにしている。いわゆる都市近郊区間は、どうも自分は馴染めないからだろう。高尾駅を過ぎると途端に地方色が濃くなり、何となくホッとする。ハイ、田舎者です(笑)。
小仏峠を越えると、これまでの濃霧が嘘のように晴れ、快晴となった。
八王子とはどうも相性が悪いという自分であるが、実は山梨県郡内地方も同様で、ここは何度も訪れ、雨も、夜も、あまつさえ台風の日も知っているが、曇りがいいところ。まともに晴れた記憶がない。今回八王子の濃霧を見たときは先行き不安になったが、山梨県に入る手前で、これはよい兆候だ。

ところでちなみに相性がいいのは同じ山梨県でも峡北地方。特に韮崎や小淵沢の辺りは自分が訪れた際には大概快晴となる。決して「雨男」ではないことはここで断っておきたい(笑)
小仏峠を越えると風景も天候も一変。山の中、快晴の相模湖駅。
どういう由来か藤野駅前のベイスターズショップ。そう言えばここは神奈川県。
とにかく快晴となった上野原駅から反復横跳びスタート。隣の四方津駅はとばして、さらにその隣の梁川駅で降りる。が、ちょっとトイレにいっていたら上り列車が発車していくのが見えた。いきなり「やっちゃった」わけだが、どうせこの後はろくすっぽ予定は立ててない。正直、今日中に甲府を過ぎるくらいまで行ければいいかな、くらいしか考えていない。
梁川駅は中央東線上に初めて現れる無人駅。この長閑な空気の中、空いた時間で数駅先までの予定を立てる。
次は1つ戻って四方津駅。
話には聞いていたが、ホームから見える山肌に巨大なパイプが這っている。これはその山頂にある新興団地「コモアしおつ」と四方津駅とを結ぶ斜行エレベーターのシャフト。
う〜んどうしよう、と思いつつ、近くに行って見てみることにした。駅から歩行者通路を伝って行くと、3分程度でその乗り場に着く。
エレベーターの「上り」釦を押してみたが、この大仕掛けなエレベーター、当然といおうか「カゴ」は中々やってこない。ふと「カンカンカンカンカン!」となにやら大きな音が迫ってきた。見上げると高校生の女のコがシャフト脇の保守通路を駆け下ってきている。「おいおい危ないなぁ」と思うや、女のコはあっという間に「下界」に降り立ち、柵を越え、駅へ走っていった。
階段を駆け下ってきたと言えばそんなものだが、思えば山一つ分の階段である。あのコは通学に山を天辺から駆け下りて来たのだと思うと妙に笑いがこみ上げてきた。ご苦労さんなことだが、確かに下りはこのエレベーターを待つより走った方が断然早そうである。
やってきたエレベーターに乗ると、カゴは山肌に沿ってゆっくりと上り始めた。シャフトはポリカーボネートか何かで囲われており外が見渡せる。うん、中々面白い。四方津駅がどんどん小さくなる。
すっかり悦に入っていると豆粒のような四方津駅からは、乗車予定列車が発車していくのが見えた。先の梁川駅で立てた予定もいきなり崩壊である。
「コモアしおつ」へのELVシャフト脇の階段。学校へ急ぐ高校生がここを駆け下ってきた。
「コモアしおつ」へのELVから四方津駅を望む。ELVは山肌を斜めにゆっくりと登る。
「コモアしおつ」から駅へ戻るが、意外に時間を喰ってしまった。
東京近郊圏となっている大月まではよいとしても、その先の笹子峠の辺りは列車本数が減る。本当は通勤通学時間帯にこれを越えたかったのだが。案の定、大月から先が少し空いてしまった。大月止まりの列車も多いためどうにも大月駅に戻ってきてしまう。まぁ好きな駅の一つなのでそれもいいかな、とは思うものの、ともあれ「反復横跳び」が崩れてしまった。

そこで崩れついでにやってきたホリデー快速で笹子峠を越えた勝沼ぶどう郷駅までスキップすることにする。とばす駅は3つだから先の無駄はない。勝沼ぶどう郷から、3駅戻って初狩、2駅進んで甲斐大和、1駅戻って笹子、そして勝沼ぶどう郷を含む3駅を飛ばして4駅先の東山梨と降りればよいからである。
笹子峠の近辺は本数が大月以東より減るとは言え、上下列車の間隔がよく、わりとスムーズな移動となった。今日は甲府を越えることができれば、とは思っていたが、楽にクリアできそうないきおいである。
が、甲府に近づくにつれ、その上下列車の間隔バランスが崩れてきた。
例えば1時間ヘッド運行の路線では1時間枠に上下の列車がそれぞれ1本ずつやってくる訳で、理論上30分に1本の列車がやってくることになる。
つまりこの進み方では各駅の滞在時間は30分となるわけだが、当然そううまくはいかない。区間によっては例えば5分→55分→5分→55分といったところも出てくる。

しかもこの時は乗り合わせが悪く、東山梨駅や春日居町駅のような特に取材するものもない小駅の滞在時間が長く、塩山駅や山梨市駅のような中規模駅が短くなってしまった。「所長」ほどのベテランになるとこういうところも上手く予定を組み上げるのだろうが、如何せん自分が無計画であるのだから、愚痴も出ない。

そしてさらに甲府が近づくと間隔バランスもさらに崩れ、上下列車ほぼ同発の駅も出てきたのである。対向の同発列車でも飛び乗れば反復横跳び続行も可能だが、「取材」のために駅を廻っているのだ。そういうわけにはいかない。次の列車を待つことになる。甲府は近そうで遠かった。
(実際終始発や退避などで列車の「溜まる」主要駅の前後で上下列車同発となるダイヤパターンが多いようです。主要駅の容量救済のためだと思います。)
ただ、滞在時間が長くなってしまった東山梨や春日居町といった無人駅であるが、意外に無人駅というのは居心地がいいとつくづく思った。
れっきとした客なので卑屈になることはないのだが、駅そのものが目的地となる旅、まして駅で車両には目もくれず構内や駅舎の写真を撮りまくり、駅から離れないままやって来た方向へ戻っていく、という旅では、有人駅では駅員の「何やってんだコイツ」という目が光っている気がしないでもない。
決して悪さをするつもりなど毛頭ないし、駅員の目がないからと言ってもそれは同様なのだが、なんとなく開放的な気分になれるのだ。(蛇足ながら春日居町駅には駅前に足湯が出来たので、特に見るものもない住宅地の駅とは言え、時間は潰せます。)
甲府駅に到達したのは午後3時半少し前。手前の酒折駅へは2時前に着いているのだから、明らかにペースが落ちている。
しかし甲府を過ぎると再びペースは上がり、また峡北地方の相性の良さそのままに快晴も持続したこともあって、思ったよりラストスパートが利いた。照度が撮影限界を超えたのは長野県に入った茅野駅であった。
結果として「ミニ関所」のようになった大月駅。しかし特急での脱出は最終手段。これは見送る。
大月からはホリデー快速で勝沼ぶどう郷駅へ。快適な車両で笹子峠を越える。
▼その2へ
▲鉄道雑学研究所北陸支所トップへ  ▲旅の記憶、旅の記録INDEXへ